L+36day's |
珍しく部活も休みになった日曜。 先日の夜から泊まりに来ていた彼が自分の隣で座って居る。 特に何もする訳でも無く、其れでも唯、一緒に居れる事が嬉しくて幸せだった。 他愛無い話をして、其の会話が途切れる度に唇を触れ合わせる。 会話が途切れるからキスをするのか、キスがしたいから会話が途切れるのかは解らなかったけれど、例え其のどちらだったにしろ自分達は唯、幸せだと思った。 誰の目も気にする必要の無い自室の中で、繰り返しお互いに触れては笑う。 英二が幸せそうに笑うのが嬉しくて、思わず自分も笑う。 窓から入り込む陽射しは温かく、部屋の中に留まっている。 外気は既に夏の物とは違い、肌寒い物になって居る事は解っており、窓を叩く風の強さとは裏腹に部屋の中は酷く穏やかだった。 お互いの気持ちを知ってから5週間と1日。 今迄と全く違った時の流れを感じる。 片思いだった時間は本当に長くて、其の感情の激しさに戸惑うばかりで彼に告げる事も憚られ、何も言う事が出来なかった。 勿論、其れは英二にしたって同じ事だったのだろうけれど、其処に在った均衡が崩れる事を恐れながらも一歩踏み出したのは彼の方だった。 自分には踏み出す事が出来なかった其の一歩に驚き、差し出された手を取って本当に良いのかと躊躇し、其れでも今迄抱えて来た思いに勝てる筈も無く差し出された手を取り、今まで口に出来なかった気持ちを彼に伝えた。 刹那、信じられないと呟きながら抱き締めて来た英二の声と腕の震えを今でも覚えている。 きっと自分も同じ様に恐れ躊躇って震えていただろうけれど、其れまでには有り得なかった距離の近さと彼の体温や匂いに身体ごと心が震えた。 話したい事も伝えたい事も沢山在った筈なのに、気持ちが通じた其の事だけで胸が一杯になってしまって何も言えず、気持ちが通じた其の時に一気に近付いた距離の中で何も言えないのが酷く不思議で、嬉しいと感じるより先に信じられない思いで一杯だった。 お互いの気持ちを知った其の日に指を繋ぎ、3日目にキスをした。 限りの在る時間の中、其れを惜しむ様に共に居られる時間を作る。 其れでも直ぐに訪れてしまう別れの時に離れたく無いと思いながら彼を見遣れば、きっと同じ事を考えて居たのだろう彼と目が在った。 もっと一緒に居たいのに。 ……もっと、英二に触れたい。 絡ませた指を其の侭に空いていた片方の手を伸ばし、其の頬に触れる。 指先で感じた滑らかさと彼の体温が指先を灼いたと感じた刹那、気付けば自ら唇を重ねていた。 英二の顔が凄く近くに見えると思った瞬間に、何も見えなくなって、唇に柔らかい物が触れる。 其の感触に驚いて何時の間にか閉じていた目蓋を持ち上げ身を退けば、酷く驚いた顔をして硬直する彼が目に入り、其処で始めて自分が彼に口付けた事に気付いた。 自分でも想像しなかった行動に驚いて謝罪の言葉を口にしながら身を退くと、其れを許さないと言った風に引寄せられて今度は彼から口付けされた。 初めてした、キス。 其れはどんな言葉よりも気持ちを雄弁に語り、幸せと愛しさが凝縮された物なのだと言う事を知った。 指を絡めたまま隣に座る彼の手を引くと、目を細めこちらを見遣る彼の頬を撫でて唇を寄せる。 覚えたばかりの拙い口付けでも、真直ぐに気持ちは伝わるだろうか。 そんな事を考えながら、本当は指先が僅かに触れただけでも跳ね上がる鼓動の事は秘密にして唇を重ねれば、其の拙い口付けに応えながら緩やかに彼が髪を梳いた。 |